前回の続きです。
大学生活も4年目。福島競馬場でのアルバイトも4年目になって異動になりました。
ご存じでしょうか。競馬場のコース内を救急車が走っていることを。
今回からはその救急車に乗る!という仕事です。
放馬止め同様、事故が何もなければただ救急車に乗っているだけ、という簡単な仕事。
ただし、
何もなければ
です。
事故というのは何も怪我をするということだけではないんです。
たとえば発走前に馬が放馬してしまいジョッキーは怪我もなくスタート地点に向かって歩いていたとする。当然発走時間が決まっていますから、そのジョッキーを乗せてスタート地点へ連れていかないといけない。その仕事も救急車。
上位入線したものの入線後に向こう正面で落馬などしてしまうと検量室が遠い。当然怪我をしているかもしれないから救急車出動ですけど、無事であっても後検量をしないと確定できませんから検量室まで運ぶのも救急車の仕事。
芝のレースではダートコース、ダートのレースでは内馬場にある道路を走って馬を追いかけてるって知ってましたか?いつどこで事故があってもジョッキーを拾えるように影でそんな仕事をしているのです。
私が救急車業務についたのは2003年夏の開催から。
福島の夏の開催って、障害レースが組まれてるんですよね。当然事故率が高いわけです。
しかも福島の障害コースは「たすき」のコースがあるから内馬場の道路が分断されるわけですのでまた大変。お昼休憩前の障害レースはすごくピリピリしていました。
でも意外と障害レースで怪我人は出ませんでした。落馬はありましたけど。
そんな中、現調教師の某障害専門騎手を乗せましたがすごく震えていました。
ホント命がけなんだな・・・と思いましたよ。
さて、前回の最後に書いた「あの事件」が起こってしまうのです。
2003年6月28日
我が地元函館開催も同時に開幕して早3日。函館競馬場に行きたいなと思いつつの救急車。
3日目は雨が降ってダートは水が浮くほどでした。
水が浮いたダートコースに入ったことありますか?
実際歩いてみると、なるほどパサパサよりも走りやすいから時計は出るよな、と実感できるんですがこればっかりはなかなか経験できないことなので当時はニヤニヤしていましたよ。
話が逸れてしまいましたけど、5Rに障害レースが組まれていて悪天候ですから当然朝から救急車内はピリピリしていました。
しかし当日の3Rの3歳未勝利戦で事件は起こったのです。
先団馬群を追走していた1番人気のメジロオルテガに3コーナー手前で故障が発生して転げるように落馬。
追走していた後ろ4頭も同時に落馬するという大事故が発生したのです。
ダートコースを追走していた我々が一番早く事故現場へ。
5人を救急車に乗せるのは不可能です。他にももう1台救急車がいて、それは我々とは対角の位置で待機しています。そっちの救急車は下手に動くと競走中の馬が驚いてしまいますから、全馬引き払ったあとじゃないと動けないのです。
頑張っても2人しか運べません。
ということで、無線で偉い人と対応を協議している職員(運転手)をよそに
「怪我の具合が重い人から運びましょう」
という現場の勝手な判断で私が発言。
自力で起き上がれないA騎手を担架に乗せて収容。その他の騎手は自力で起き上がっていましたので。
一番先輩のB騎手のが
「まずAだけでも先に運んでやってくれ!」
とカッコよく言ったのですが、座れば乗れそうだったので近くにいたC騎手も収容。(現場の判断)
さぁ苦しそうなA騎手を乗せていざ医務室へ。
しかしまだ偉い人と無線でやり取りしている職員(運転手)。
「もう1台来るから早く出してください!」
とキレてしまいました。
(その後A騎手は検査の結果肋骨8本を骨折して全治2カ月と判明)
その後もう1台が先輩B騎手以外の2人を乗っけて医務室で合流。
先輩B騎手は急遽出動した発走委員用の黒い高級車で医務室へ搬送されたとか。
その直後の4Rは10分遅れで発走。
そんな事故があったというのに偉い人はそれでだいぶ不機嫌になっていたようです。痛いですね。
その日の5Rは障害レース。我々もピリピリしていたので
(事故るんじゃねぇぞ!)
というオーラが救急車から相当放たれていたと思います。
それが効いたのかその日はそれ以降無事故。
しかしアルバイト終了後、わたしは事務所に呼ばれたのです。
(あれ?勝手な現場の判断で怒られるの?おかしくね?チンタラやってる職員の方が悪いだろ?)
と思いながら事務所へ行ったのですが、
職員「『早く車出せ』って言ったんだって?C騎手が言ってたよ。」
私「はい・・・すみません。A騎手が苦しそうでしたし・・・」
職員「いやぁC騎手が褒めてたよ。今日はお疲れ様。あとB騎手が『なんで先に俺を運んでくれないの?』って言ってたみたいだよ。滑ってズボンが裂けてたんだってさ。」
私「・・・」
Bさん・・・カッコいいと思ったのに・・・
C(四位じゃないよ)さん・・・いい人だな・・・(下手だけど)
かなりグッタリした1日で、次の日もあるのか・・・次の日は何も起こりませんように。何も起こらないって幸せだ。
と願ったのでした。
しかしその翌日、まさかあんな事件が起こるなんて・・・
~続く~
大学生活も4年目。福島競馬場でのアルバイトも4年目になって異動になりました。
ご存じでしょうか。競馬場のコース内を救急車が走っていることを。
今回からはその救急車に乗る!という仕事です。
放馬止め同様、事故が何もなければただ救急車に乗っているだけ、という簡単な仕事。
ただし、
何もなければ
です。
事故というのは何も怪我をするということだけではないんです。
たとえば発走前に馬が放馬してしまいジョッキーは怪我もなくスタート地点に向かって歩いていたとする。当然発走時間が決まっていますから、そのジョッキーを乗せてスタート地点へ連れていかないといけない。その仕事も救急車。
上位入線したものの入線後に向こう正面で落馬などしてしまうと検量室が遠い。当然怪我をしているかもしれないから救急車出動ですけど、無事であっても後検量をしないと確定できませんから検量室まで運ぶのも救急車の仕事。
芝のレースではダートコース、ダートのレースでは内馬場にある道路を走って馬を追いかけてるって知ってましたか?いつどこで事故があってもジョッキーを拾えるように影でそんな仕事をしているのです。
私が救急車業務についたのは2003年夏の開催から。
福島の夏の開催って、障害レースが組まれてるんですよね。当然事故率が高いわけです。
しかも福島の障害コースは「たすき」のコースがあるから内馬場の道路が分断されるわけですのでまた大変。お昼休憩前の障害レースはすごくピリピリしていました。
でも意外と障害レースで怪我人は出ませんでした。落馬はありましたけど。
そんな中、現調教師の某障害専門騎手を乗せましたがすごく震えていました。
ホント命がけなんだな・・・と思いましたよ。
さて、前回の最後に書いた「あの事件」が起こってしまうのです。
2003年6月28日
我が地元函館開催も同時に開幕して早3日。函館競馬場に行きたいなと思いつつの救急車。
3日目は雨が降ってダートは水が浮くほどでした。
水が浮いたダートコースに入ったことありますか?
実際歩いてみると、なるほどパサパサよりも走りやすいから時計は出るよな、と実感できるんですがこればっかりはなかなか経験できないことなので当時はニヤニヤしていましたよ。
話が逸れてしまいましたけど、5Rに障害レースが組まれていて悪天候ですから当然朝から救急車内はピリピリしていました。
しかし当日の3Rの3歳未勝利戦で事件は起こったのです。
先団馬群を追走していた1番人気のメジロオルテガに3コーナー手前で故障が発生して転げるように落馬。
追走していた後ろ4頭も同時に落馬するという大事故が発生したのです。
ダートコースを追走していた我々が一番早く事故現場へ。
5人を救急車に乗せるのは不可能です。他にももう1台救急車がいて、それは我々とは対角の位置で待機しています。そっちの救急車は下手に動くと競走中の馬が驚いてしまいますから、全馬引き払ったあとじゃないと動けないのです。
頑張っても2人しか運べません。
ということで、無線で偉い人と対応を協議している職員(運転手)をよそに
「怪我の具合が重い人から運びましょう」
という現場の勝手な判断で私が発言。
自力で起き上がれないA騎手を担架に乗せて収容。その他の騎手は自力で起き上がっていましたので。
一番先輩のB騎手のが
「まずAだけでも先に運んでやってくれ!」
とカッコよく言ったのですが、座れば乗れそうだったので近くにいたC騎手も収容。(現場の判断)
さぁ苦しそうなA騎手を乗せていざ医務室へ。
しかしまだ偉い人と無線でやり取りしている職員(運転手)。
「もう1台来るから早く出してください!」
とキレてしまいました。
(その後A騎手は検査の結果肋骨8本を骨折して全治2カ月と判明)
その後もう1台が先輩B騎手以外の2人を乗っけて医務室で合流。
先輩B騎手は急遽出動した発走委員用の黒い高級車で医務室へ搬送されたとか。
その直後の4Rは10分遅れで発走。
そんな事故があったというのに偉い人はそれでだいぶ不機嫌になっていたようです。痛いですね。
その日の5Rは障害レース。我々もピリピリしていたので
(事故るんじゃねぇぞ!)
というオーラが救急車から相当放たれていたと思います。
それが効いたのかその日はそれ以降無事故。
しかしアルバイト終了後、わたしは事務所に呼ばれたのです。
(あれ?勝手な現場の判断で怒られるの?おかしくね?チンタラやってる職員の方が悪いだろ?)
と思いながら事務所へ行ったのですが、
職員「『早く車出せ』って言ったんだって?C騎手が言ってたよ。」
私「はい・・・すみません。A騎手が苦しそうでしたし・・・」
職員「いやぁC騎手が褒めてたよ。今日はお疲れ様。あとB騎手が『なんで先に俺を運んでくれないの?』って言ってたみたいだよ。滑ってズボンが裂けてたんだってさ。」
私「・・・」
Bさん・・・カッコいいと思ったのに・・・
C(四位じゃないよ)さん・・・いい人だな・・・(下手だけど)
かなりグッタリした1日で、次の日もあるのか・・・次の日は何も起こりませんように。何も起こらないって幸せだ。
と願ったのでした。
しかしその翌日、まさかあんな事件が起こるなんて・・・
~続く~