桜花賞(GI)2012:新星ハナズゴールの本質を斬る(前編)

  さて、先週取り上げたフェデラリストですが、大阪杯で早め先頭も、外からショウナンマイティに一閃、差し切られてしまいました。ラップ的に判断すると、超スローからの究極の切れ味戦となっています。L2が11.2というラップなんですが、これは当時のとても重い阪神芝では出色のラップタイムで、勝負所に重い芝で究極の脚を出し尽くしたところに、脚を使わないでいたショウナンマイティがL1の落ち込みと相まって伸びてきたという所だと思っております。個人的には、このフェデラリストの内容は見た目以上のパフォーマンスだと思っていて、これならGIでも戦えるなと同時に、良い具合に人気も落ち着いてくれるのではと、密かにほくそ笑んでいるところです。

 

 今週は春のクラシック開幕を告げる3歳牝馬のマイル戦、桜花賞が開かれます。CMでは初代三冠牝馬メジロラモーヌが選ばれたが、今年はどんなレースになるんでしょうか。

 

 春のトライアル戦線が始まるまでは、下馬評で断然抜けた存在だったのは、恐らく2歳女王ジョワドヴィーヴル。あの圧巻の末脚を繰り出されてはそれは仕方がないのかもしれない。ただ、そんなジョワドヴィーヴルが前哨戦とはいえ、チューリップ賞で完敗の3着という形に終わり、そのレースで彗星の如く現れたハナズゴールに主役の座を明け渡してしまったのだから、様相は一変、戦国桜花賞となった。

 

 今回は、前哨戦でジョワドヴィーヴルを子ども扱いしたハナズゴールに焦点を絞ってみたいと思います。ここ2走こそ強烈なパフォーマンスを見せてきましたが、それまでは何度も敗戦を経ています。つまりは、今の段階で弱点も露呈させているはず、それを全て明らかにしたうえで、最終的に桜花賞でどう判断するかでしょう。

 

 まずは強烈なインパクトを残したチューリップ賞での差し切り勝ち。これを評価出来る点は2つ。一つはジョワドヴィーヴルやジェンティルドンナ、エピセアロームといった強敵相手に、非常に大きな着差をつけての勝利だということ。もう一つはラップ推移と時計、いずれも現時点では破格だということです。前者に関しては、レース分析の上で比較するとして、後者の時計、ラップ要素の評価から説明したいと思います。同日の1600万下で同コースの武庫川Sとの比較が非常にわかりやすいでしょう。

武庫川S12.7 - 11.4 - 11.7 - 11.9 - 11.9 - 12.0 - 11.2 - 12.5

1:35.3 35.8-35.7

チュー賞12.7 - 10.9 - 12.1 - 12.3 - 12.2 - 12.2 - 11.3 - 11.8

1:35.5 35.5-35.3

 武庫川Sは比較的中盤に緩みが無い平均的な競馬となっており、L1が12.5とかなり落としています。当然全体時計を出すという点では平均的によどみないラップを刻む方がベターですし、チューリップ賞は武庫川Sと比べて、ペース的には時計が出にくい展開だったと言えます。また、レースラップは先頭の馬が刻むという点はあれど、L1が11.8と、ペースの違いはあれど、L1だけで0.7もの差があるということになります。もちろんペースの違いというものは大きいし、ペースが上がって追走に脚を使って最後まで持つか、それは別問題です。が、現段階で、1600万下と遜色のない時計を叩き出し、ラップ的にはこちらの方が優れているということは、3歳牝馬では極めて稀であると言えます。

 

 比較対象としてブエナビスタのチューリップ賞と、やはり武庫川Sとの比較を見ても、これは一目瞭然で、武庫川1:34.9に対し、チューリップ賞1:36.5。これはラップ的な分析からも、武庫川の方が明らかに上であり、現時点で古馬との相対的なパフォーマンス比較では、ハナズゴールの方が上ということが出来るのです。もっとも、これも古馬の武庫川Sのレースレベルに依る所もあるので、一概にいうことはできません。それでも、基本この時期で古馬1600万下と同等なら、牝馬なら傑出したパフォーマンスであると言って差し支えないわけです。

 

 では、時計、ラップ分析はこのぐらいにしておいて、レース分析に移りたいと思います。

チューリップ賞

 

 12.7 - 10.9 - 12.1 - 12.3 - 12.2 - 12.2 - 11.3 - 11.8

 スタートはやや出負けして後方からの競馬になり、無理せずに後方からじわじわとポジションを上げていくような競馬をしています。3~4角では外目からある程度手が動いていて、4角では完全に仕掛けられて中団の後ろに取り付いて直線。直線序盤は内にもたれたり、ややふらついていましたが、L1でグンと伸びると、あとは伸びあぐねる内を尻目にまさに圧勝の二文字。

 

 まあ、見ていた人なら間違いなく記憶に残っているであろうこの圧勝劇。改めて分析してみると、やはり相当強いパフォーマンスを見せています。特に特筆すべきはL1の伸び。L2で11.3とかなり速い脚を使わされていて、ほとんどの馬がここで脚を使い切ってL1で落としています。しかし、この馬はL2でもある程度良い脚を使って先頭に取り付き、L1でばてずに突き抜けている。これは前述の時計・ラップ的な分析を加えて評価すれば化け物クラスであると言えます。実際上位の面々は現時点でクラシック最右翼が揃っていたわけで、それを相手にこの圧勝なのですから、当然と言えば当然でしょう。ペースも平均気味のスローペース。その中で、上り34.0というのは突出したパフォーマンスです。少なくとも、展開が嵌ってフロックで勝ったとかそういうレベルでないことだけは確かでしょう。間違いなく力は相当のものがあります。

 

 続いて、その前のレースとなった2/11の500万下戦。実はこのレースは東京芝1400mらしい切れ味と究極の瞬発力が必要となっています。早速見てみましょう。

 

12.5 - 11.8 - 13.0 - 13.1 - 11.2 - 11.2 - 11.4

 L4-3で13.1-11.2と急加速していて、ここでかなりの瞬発力が問われています。そこから、11.2-11.4とほとんど落とさない、究極の切れ味勝負となっています。

 

 五分のスタートですが、行き脚で見劣り、多少押されながらもほぼ最後方からの競馬になります。しかし、3角で外に持ち出すと、目立って押し上げることもなく、馬群一団の後方のままで直線。序盤の急なペースアップにも楽に反応して追走すると、加速しきったL2でとんでもない脚を繰り出してグングン伸びてくる。L1ではラップを落とさないで当然と言わんばかりに強烈に突き抜けた。明らかではありますが、とにかく切れ味勝負の東京1400で大外ぶん回し、しかも勝負どころでも押し上げて直線を剥いたというわけではなく、ペースに合わせながら瞬発力勝負に対応してきたというのは、やっぱり化け物クラスですよ。レースレベル自体は低かったけど、この時の府中は内圧倒的有利の馬場状態。それでこれだけの大外一気を決めるのだから、もう桁が違う。

 

 最後に新馬戦も分析してみましょう。東京芝1600m良馬場。11番人気という低評価を覆しています。

 

12.6 - 11.4 - 11.6 - 12.5 - 12.7 - 12.0 - 11.5 - 11.4

 

 前後半がやや早く、中盤で緩んでいるレースで、しかも実質2F戦でL1最速と、かなり特殊。時計が遅い原因は中盤の緩みで、L1最速であるように、力を出し切った競馬ではないのは間違いないです。

 

 やや出負けから、押して中団ぐらいにはつけたいが、行き脚がつかずに後方まで下がってしまう。3角で緩んだので外に持ち出すが、コーナーはずっとペースが上がらずに馬群が凝縮してしまい押し上げきれないまま直線。序盤で狭くなって加速に手間取ったはずなのだが、外に持ち出すと他とはついているエンジンが違うと言わんばかりに突き抜けた。この時点での、冷静な分析をするならば、ペース自体がそれほど上がらなかったので、なんとか直線でも団子で射程範囲内に入れられたけど、ペースが早くなった時の不安は大きいなと思っていました。少なくとも、マイルは短いと。この辺りは使われることで良化してのチューリップ賞ということはあるかもしれません。

 

 以上3走のパフォーマンスから、エンジンがかかってからの極上の切れ味と、それを持続させることが出来るとんでもない馬、という所でしょう。が、既に下級条件で2敗しているように、弱点もあるはずです。後編では、敗れた2走を分析し、注目馬診断として、総合的な判断をしたいと思います。

 

 


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